自動車盗(じどうしゃとう)は、自動車の窃盗のことを指し、警察白書では窃盗の一形態に分類される。自動車等の積荷や車両内から現金や品物を盗むことは車上狙いにあたるので同記事を参照のこと。
日本における自動車盗
統計による窃盗の実態
法務省と警察庁の統計データより、1967年~2023年の認知件数は、1967年~1969年にかけて急増し、4万7,563件となったが、1970年~1973年にかけて減少し、1973年は2万9,418件と3万件を切った。しかし、翌年の1973年~1998年は、3万~3万6千件の間で増減を繰り返していたが、1999年~2003年にかけて、急激に増加し、2003年は6万4,223件と統計のある1967年以降の数値で最多となった。そして2003年をピークに減少し、2021年は5,182件と1967年以降最少の件数となったが、2022年は2019年コロナウイルス対策の行動制限緩和により外出する人が増加し、人と出会う機会が増えたことから前年より増加して5,734件となり、2023年は5,762件となり2年連続増加している。
警察庁の2022年の統計データより、自動車10万台当たり7.3台であった。また、自動車のエンジンキー(イグニッションキー)が、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)に差し込まれていたままか、運転席又はその周辺に放置された状態で盗難に遭ったものは、全認知件数の約4分の1(1,443件)であり、残りの約4分の3(4,291件) は、そのような状態で無いにも関わらず、盗難に遭っている。
被害額別では、200万未満が全認知件数の約45.6%を占めていた。また、2013年 - 2022年の間で、被害額300万以上の比率が増え(2012年:約12.1 %→2022年:約38.0 %)、逆に200万未満の比率が減少している(2013年:約69.1 %→2022年:約45.6 %)傾向があり、段々と盗難する対象が高級車(高額車)へと変わりつつある。そして、盗難自動車が戻ってきた確率は、約24.8 %であった。また、自動車のエンジンキー(イグニッションキー)が、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)に差し込まれていたままか、運転席又はその周辺に放置された状態で盗難に遭った自動車は約46.2 %、そうでない状態の場合は約17.6 %であり、前者の方が還ってくる確率が高い。
そして、警察等に認知されていない犯罪の件数(暗数)を含めて実際の犯罪実態を調べる目的で2000年以降数年に1回行われる法務省の2019年犯罪被害実態調査により、自動車盗難にあったと答えた自動車所有者の割合は、2018年中に被害が遭ったと回答した者の割合は0.0 %、2014年 - 2018年の間に遭ったと回答した者の割合の場合は、0.2 %であった。また、この調査は2000年以降5回行われているが、被害に遭う割合は一貫して1 %未満となっており、2019年犯罪被害実態調査では、今までの調査の中で最も低い被害率であった。(5年以内被害率 2000年:0.7 %→2004年:0.7 %→2008年:0.9 %→2012年:0.9 %→2019年:0.2 % )
そして、被害を警察に届け出た割合は約85.7 %であった。しかし、残りは調査回答者本人だけでなく家族にも被害に遭ったかのかを含めて質問しているためか無回答であり、かつ保険会社へ盗難に対する補償を申請する為、警察に届け出なければならず、暗数になりにくいため、通常は殆どない。
また、自動車盗難で検挙された者の年齢層は、30代・40代が625人中でそれぞれ113人と132人あり、約18.1 %と約21.1 %を占めていたが、10万人当たりの検挙人員では、14 - 19歳の未成年・20代がそれぞれ約1.0人、約1.1人と他の年齢層よりも高い。
イモビライザーなどの盗難防止装置が普及しているが、これらの装備が標準化されている高級車に盗難対象がシフトした原因として、スマートキーやController Area Network(CAN)を利用する専用ツールが犯罪者の間で売買されるようになり、利益が出る高級車を素早く盗めるようになったことが考えられる。対策としてはハンドルやタイヤを物理的にロックするなど原始的な手法が有効とされる 。
自動車盗難事故実態調査
日本損害保険協会は、自動車にまつわる盗難の保険事故をまとめたデータを公開している。2022年の自動車盗難件数は全国で5,734件で、最も盗難件数が多い都道府県は愛知県の884件となっている。
2020年までワースト1であり、2021年はワースト1を脱して2022年にワースト5となった茨城県はワーストになる背景に、「田畑に囲まれてポツンとある広い家にクルマが2~3台並んでいる」と表現する位、住宅が密集されていない環境故に、地域の監視機能が必然的に低くなってしまうこと、加えて高度経済成長期以降移住した住民が多いため、古くから住んでいる人が多い地域よりも監視機能が弱いことに背景があることを指摘されている。
米国における自動車盗
統計
連邦捜査局の公表資料によると、2020年の自動車盗の件数はミシガン州で18,385件、オハイオ州で20,077件だった。
対策
以下のような対策が有効とされている。
- 短時間でも自動車から離れるときは鍵をかけ、給油時は鍵を抜く。
- 管理人や警備員が配置され、照明設備のある駐車場を利用する。
- 利用者の多い駐車場を利用し、大型車の間などの死角となる場所への駐車を避ける。
- 盗難防止装置の付いた自動車を選択する。
- 盗難時に判別できるよう自動車には目印を付け車台番号を控えておく。
Hot Wheels
全米保険犯罪局(NICB:National Insurance Crime Bureau)は、毎年、最も盗難被害にあった車のランキング「Hot Wheels」を発表している。これは警察から全米犯罪情報センター(National Crime Information Center)に報告された盗難データをNICBが分析したものである。
2019年の全米保険犯罪局(NICB)の分析では次のような調査結果となった。
- Fシリーズ(フォード)3万8938台
- シビック(ホンダ)3万3220台
- シルバラード(シボレー)3万2583台
- アコード(ホンダ)3万745台
- カムリ(トヨタ)1万5656台
- アルティマ(日産)1万3355台
- カローラ(トヨタ)1万2137台
- ラム(ダッジ)1万1292台
- シエラ(GMC)1万1164台
- CR-V(ホンダ)1万94台
脚注
出典
関連項目
- 窃盗
- 二輪車盗
- イモビライザー
- 自動車保険
- 窃盗団
- バニシングin60″ / 60セカンズ(自動車盗が主人公のハリウッド映画・後者は前者のリメイク)
- ヤード条例
- グランド・セフト・オート (曖昧さ回避)
- 猫 - 自動車盗の対象となる高級車を指す隠語。
外部リンク
- 日本損保協会、車両盗難被害はランクル、プリウス、レクサスがワースト3位 - impress,2020年5月7日記事
- 自動車盗難情報局 - セキュリティショップA2M




